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「不完成」と向き合う制作ー 2025  椿苑・山部泰司展《境界線上の風景》を振り返って

  • 執筆者の写真: 苑 椿
    苑 椿
  • 11月23日
  • 読了時間: 2分

今年も終わりに近づいてきたので今年開催した展覧会を振り返ってみようと思う。


まず、2025年5月、山部さんとの二人展。


展覧会のテーマについて山部さんと話し合う中で、「不完成」や「草稿」といった言葉が

浮かび上がってきた。

さらに、花のドローイングや1分で描く課題など、普段は手を伸ばさない表現方法も

提案され、久しぶりに大きく戸惑うことになった。

けれど、その違和感こそが、この展覧会制作の重要な出発点だったように思う。


ちょうど同じ時期、私は楯築遺跡をテーマとした絵を描き始めていた。

土地の記憶や自然の形態に向き合う中で、これまで自分が積み重ねてきた表現を改めて

問い直す感覚があった。

そこに「不完成」というキーワードが重なり、制作の軸が揺れ動きつつも、新しい視点が

開けていくのを感じていた。


日々抱えている“課題”はあるのに、予定に追われ、新しい挑戦から目を背けてしまうことが多かった。

作品の質が落ちるのではないかという恐れ。「これは作品として出すべきではない」

という、根拠のない思い込み。

そのせいで、取り組む前から手を止めてしまうことが続いていた。


しかし、この展覧会準備の時期に、いくつかの出来事がたまたま重なり、

「やってみよう」

と、素直に思える瞬間が訪れた。


無意識のうちに避けていたものに向き合いながら制作することは、

思った以上に豊かな体験だった。

完成へ向かう一歩手前の状態に宿る力や、途中の線が持つ呼吸のようなもの。

その揺らぎの中に、私自身がまだ見ていなかった表現の可能性があった。


この展覧会を通して、作品の“途中”を肯定し、そこに価値を見いだす感覚が少しだけ育ったように思う。

今後の制作でも、この経験が新しい余白を開いてくれそうだ。


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      元竹喬美術館館長、上園四郎先生を招いてのトークの様子。


 
 
 

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